民間の医療保険についてみていく前に、まずは基礎知識として、「日本の公的医療制度」の体系・種類がどのようになっているかをおさらいしておきましょう。
我が国の医療保険について(厚生労働省) をご参照ください。
わが国の医療制度は、ご存じのとおり「国民皆保険」となっています。
すなわち、「あらゆる国民は必ず、(市町村国保・協会けんぽ・共済組合など「保険者」こそ異なるものの)公的医療保険のいずれかに加入していなければなりません」(もっとも、最近は保険料の支払いが苦しいなどの理由により、やむなく無保険状態となっている方も多くいるのが現実ですが)。

よく引き合いにだされますが、アメリカではこのような国民皆保険の制度が無かったため、国民は民間保険に加入するか、あるいは万一の病気の際は高額の医療費をとられる覚悟で無保険状態でいるかの、どちらかを選ばざるを得ませんでした。
今ではご存知のように、いわゆる「オバマケア」が2010年に導入され、アメリカでも形式的には皆保険制度が実現しています。
しかし「オバマケア」は「民間の」医療保険への強制加入を義務づけたもので、「国の社会保障」として公費で大半が賄われる日本の国民皆保険とは、本質的に異なっています。
オバマケアでは薬価や保険料・免責額などの決定権は引き続き民間の保険会社が持っているため、保険料や薬の価格が高すぎて支払いが出来ない患者の急増が社会問題化しています。
さて日本に話をもどしますが、入院や通院・手術などをした場合に保険金が支払われる「医療保険」や死亡時の保険金を主な目的とする「生命保険」において、とりわけ保険料の払いすぎが指摘されるケースが珍しくありません。
保険の見直しによって家計のリストラをはかろうとする家庭も、家計が厳しさを増す中でさらに増えつつあります。
会社員の方は先月の給与明細を取り出して、「健康保険料」の欄をもう一度、じっくり見てみましょう。
自身や家族の病気・ケガをカバーする保険のために、たとえ自発的な加入でないにせよ、月々すでに相当の金額を支払っているはずですね(しかも半分は会社負担なので、実際はその倍額です)。
そう、あなたはすでにリスクに備え、それなりに金銭的な手当てを済ませているのです。
よって民間の医療保険をさらに加えたいのなら、「なぜ、いま以上の保険(保障)が必要なのか」、自分なりにきちんと納得できる理由を得たうえで加入すべきです。
まずは、自分の家庭の誰かが重い病気にかかるなど万一のダメージがあった場合、費用面で公的医療保険がカバーする限界を上回るリスクが、どれくらいあるのか。
その点を事前にきちんとシミュレートしてみたことは、おありでしょうか。
たしかに昨今はさまざまな問題点が指摘されている日本の公的医療ですが、システムとしての国民皆保険は、それが存在しない国があることを思うなら、個人としてはとりわけ家計の面で、非常にありがたい仕組みであることは事実です。
ですから民間の医療保険加入を考えることも大切ですが、そのまえにこの否応なく加入している「公的医療保険を徹底的に活用する・使いたおす」ことを考えるのが先決です。
公的保険では、1ヶ月の自己負担額が一定額を超えた場合は、超えたぶんの全額が健康保険(国民健康保険)から戻ってくる「高額療養費制度」があります。
高額療養費・高額介護合算療養費(協会けんぽ)
また会社員なら、病気などで働けなくなった場合は、健康保険からは「傷病手当金」、仕事上のけがで働けなくなった場合は労災保険から「休業補償給付」が支給されます。
これらは最長1年6ヶ月の支給ですが、それ以上にわたる場合は「障害年金」や「傷病年金」が支給されます。
傷病手当金(協会けんぽ)
まずはこのように「公的医療保険や貯金などでカバーできる金額分を差し引いた上で、さらに不足しそうな金額」が、本当の意味での、あなたや家族にとっての「必要保障額」となるわけです。