医療保険は一般に加入年齢が高いほど保険料は上がりますが、基本的に65歳の保険料払込終了時までの保険料の総額は、いつ支払ったとしても金額的にそれほど違わない結果になることをご存知でしょうか。
「保険料を月々に支払う瞬間に負担をどれほど感じるか」という問題を脇に置けば、たとえば20歳から月額保険料が7,000円で新規に加入した場合と、50歳から月額保険料20,000円で新規契約した場合を比較して、65歳時点で振り返ってみたときのトータルではほとんど変わらない金額を払い込むことになるわけです。
また、医療保険のパンフレットに「60歳以上からは支払保険料はゼロ(ないしいは半額)」「一生涯、保険料は変わりません」と謳われていたとしても、これらは本質的には、契約者の払込のタイミングが「先払い」か「後払い」か、あるいは「均等に慣らされた金額を生涯にわたって払い続けるか」の違いとなります。
払込を受ける保険会社の立場でいえば、トータルの金額はほとんど変わらないのです。
保険会社が商品として設定する保険金は数理計算上、契約者が支払った保険料の総額をベースに算出されるからです。
これを契約者の目線でみると、保険料の損得の話ではなく、「いつ支払うか」という時期の話になるわけです。
ところが、以上を踏まえたうえでどう判断していくかとなると、人によって考え方が分かれます。
「支払総額に差がないのなら、できるだけ早く保障を得るためにも、若いうちから医療保険に入っておこう」という考え方もありますし、あるいは「いつ加入しても同じなら医療保険は選ばず、その分を貯蓄に回して、公的保険で賄えない分を取り崩して対応しよう」という考え方もあるわけです。
医療保険、保険料のムダをはぶくための「必要保障額」を考える でも記したとおり、30万円程度の貯えがあれば、公的保険とあわせて大抵の病気には対応できますし、大病に備えるにせよ200~300万円程度あればほぼカバーすることが可能だからです。
年齢が上がるほど新規に加入するのが難しくなるのが医療保険ですが、たとえ加入年齢が遅くなり、その時点での支払保険料が高くなったとしても、40~50歳といった自分の年齢の節目で加入保険の見直しをはかり、そこから新規加入する方もいます。
たとえば、一般にがんに罹患する可能性が高いとされる45歳を過ぎてから、がん保険とセットではじめて加入するとか、医療保険を見直す最後のチャンスとされる50代に入った段階で、共済から医療保険に切り替えるといった具合です。
これは支払保険料の総額が変わらずとも、ライフステージの時々において保険以外のお金がどれほど必要になるかは人それぞれ、ケース・バイ・ケースだからです。
ただし50歳代後半ともなると、すでに病気の一つもして既往症を抱えていることも珍しくありません。
加入年齢が遅くなるほど、そのぶん告知による加入条件をクリアできなくなるリスクも高まることは、踏まえておきましょう。
また40~50代は子供が独立する年代でもあるので、子供が成長を終える前の万一の事態をカバーすることが主目的となる死亡保障を手厚くするよりも、これまで特約で対応していた配偶者の医療保障を医療保険に切り替えるなど、「いくつかの加入済保険の資金配分を見直す」方策も取り得るでしょう。
こうして見てみると、医療保険加入の損得は、個々人が置かれる状況で異なると言わざるを得ません。
また必ずしも支払った金額の多寡だけで、その是非を評価できるものでもありません。
結果的に後で振り返って、医療保険に入らなくて得だったと思える瞬間もあれば、あの時に加入していて良かったと思えることもあるでしょう。
自分で考えることをストップしたままTVやウェブ・本・あるいは営業マンの勧める保険に加入するのではなく、人生の要所で自身と家族のことを自分なりに考え、その時点でベストと決断した手当を行なっていくこと、そして変化に応じて時々の見直しをはかっていくことこそが、もっともスマートな医療保険の選び方ではないでしょうか。