医療保険を契約するにあたって、「3ヶ月以内に医師の診察・検査・治療・投薬を受けたかどうか」「過去5年以内に、入院・手術を受けたか」「過去2年以内に、健康診断や人間ドックで異常を指摘されたことがあるか」等々を告知する義務が課されています。まれに、医師による診察(診断書)が必要とされる場合もあります。
被保険者本人の「告知書」への記入による「告知義務」によって、契約が成立しなかったり(保険謝絶)、審査で違反が判明すると保険金が支払われない(正当なる不払い)可能性があるとして、すでによく知られるところですね。
【PDF】資料編P176~178 [告知書ひな形](生命保険文化センター)
いずれにせよ、告知書のスタイルは保険会社・保険商品によって異なるので、契約前には約款とも照らしあわせながら、個別によく確認することが大切です。
「特約」選びのポイント~「重要事項説明書」そして「約款」
告知により、ある保険会社では保険謝絶となっても、別の保険会社で加入できる可能性もあります。
ただし他社の商品を含めた複数の保険に加入する場合は、保険会社への「通知義務」が課されていることがあるので、「契約のしおり」等で確認することが必要です。
保険会社の「支払査定時照会制度」によって、他社の加入状況やこれまでの保険金支払履歴(結果的に過去の病歴)がわかるようになっています。特に加入から支払までの期間が短い場合や保険金額が大きい場合は、間違いなくチェックされるものと考えておきましょう。
支払査定時照会制度について(生命保険協会)
告知後に首尾よく医療保険に加入できたとしても、完全な引受でなく、「条件(部位不担保など)」がつく場合もあります。
一般に軽く考えられがちでも告知によって保険謝絶となる可能性のある病気の代表例は、「うつ」「ぜんそく」「過労」「高血圧」「更年期障害」などです。
保険会社の立場に立てば、現時点の身体の異常が、時間経過によってどのように推移するかがわからないからです。
生保レディに代表される営業職員は、「保険会社の代理権限」を有していません。彼らに「告知受領権」は無いのです。
したがって「営業職員に告知義務について尋ねてOKをもらっても、無効になる」ことは、知識として知っておくべきです。
ちなみに損害保険の代理店が医療保険を販売する場合は、代理権が付与されている(だからこその「代理店」です)ので、告知受領権があることになります。
女性の場合、妊娠中は保険加入を謝絶されたり条件付きとなることも多いので、加入を検討している場合は妊娠前に行っておくほうがよいでしょう。ただしこれも保険会社によって対応が異なるため、約款をよく確認しておく必要があります。
告知義務違反があっても、その事実と病気やケガとの間に因果関係が無ければ、原則として保険金は支払われます。
「契約後2年以内なら、保険会社は告知義務違反で契約が解除できる」旨が、約款に書かれています。
これを裏返して、告知義務について何らの検討が無いまま2年以上が経過したなら、重大な契約違反(詐欺や不法行為による無効等)がない限りは、告知義務違反に問われることはまず無い、と解釈されています。
いずれにせよ、契約前に約款の「告知義務に関わる条項」にはよく目を通しておくことが必須です。
保険会社もあくまで営利企業であり、健康状態の悪さを大目に見て気前よく保険金を払っていては事業を継続できないことを、常識としても踏まえておきたいところです。
このように、責任開始期から2年以内に告知義務違反が判明すれば、当該契約は通常解除されます。
払い込んだ保険料は解約返戻金として規定金額が払い戻されますが、重大な告知義務違反が認められる場合には、返還されないケースもあります。また支払済の保険金がある場合、返還請求を受ける可能性もあります。
保険金の支払いを行うかどうかの判断権が、保険会社側にあることを忘れないようにしましょう。
生命保険の告知義務に関するトラブル-告知義務違反を問われないために(国民生活センター)
【PDF】告知義務違反を問われないために(国民生活センター)
ちなみに医療保険の中には、加入者に告知義務を課さない(加入者の選別を行わない)「無選択型」商品がありますが、これらは商品内容をよくチェックする必要があります。
免責期間を長めに設定したり、1入院限度日数を短く設定したり、加入できる年齢・職業の条件が厳しかったり、あるいは更新時の保険料の増加率が高く設定されていたりします。
つまり告知義務がないぶん、他の加入条件設定が厳しくなっていると考えておくべきでしょう。