対面販売を中心に商品を販売する保険会社の場合、営業職員や保険代理店の営業経費や広告宣伝費などのさまざまな営業コストが発生することになります。
これらの営業コストはなんらかのかたちで保険商品に反映され、間接的に保険料のアップ要因として組み込まれているはずです。
最近は、このような営業コストがかからないとして保険料が割安に設定できる点をセールスポイントにした「ネット専業の保険会社」が、業績を伸ばしてきています。
希望者がインターネットのホームページから直接医療保険の資料を取り寄せ、自分自身で商品内容を判断して申し込むため、保険料が安くすむというわけですね。

支払保険料も安くすませられるし、セールスの勧誘にへきえきすることも無いのでこれは一石二鳥...と思われるかもしれませんが、「利用者にとって本当のメリットとは何なのか」については、考えてみる必要がありそうです。
まず、「ネットで保険商品に加入すると営業コストが削減できるぶん、保険料が安くなる」という点ですが、それらのコスト削減ぶんがどういうかたちでどれくらい安くなったかについては、消費者としては真実を確認するすべがありません。
ホームページなどで保険会社の説明をチェックすることはできますが、第三者の検証が入っているわけではありませんし、厳しい販売競争を勝ち抜くためネットやさまざまなメディアを通じての広告宣伝費の投下を、対面販売の保険会社以上に強化しているはずです。
最終的にそれらが保険料にどう反映されているのかがよくわからない以上、ネットで保険加入するほうが断然おトク...とまでは言い切れません。
またネットで医療保険に加入する場合は、関心を持った商品の資料請求から、入院・通院日額など保障内容の確認や自分に最適なプランの契約に至るまで、すべてを自らの手で行わなくてはいけません。
そのための情報収集と保険会社や保険商品の比較作業を、各社から資料をとりよせ自分で丹念に約款を読んで行わなくてはならない、ということです。
もちろんそうすることが理想的なのは確かですが、数社の保険商品の細かい字で書かれた約款を照らし合わせつつ読んでいくのは、実際にはなかなか骨の折れる作業です。
疑問や不明点がある場合は、その都度保険会社にメールなどで問い合わせることも必要になってくるでしょう。
いったん保険契約をしてしまうと「約款の内容を原則としてすべて確認し、理解した」という前提に置かれてしまうことは、よく理解しておく必要があります。
万一病気になって入院したときなどに、保険金の支払いについて保険会社と主張の食い違いが生じたときなどは、「自分がどの程度その医療保険商品の約款を理解しているのかだけが、頼りとなる」のです。
( 「特約」選びのポイント~「重要事項説明書」そして「約款」 もご参照ください。)
こういったトータルの時間コストを考え合わせていくと、対面販売にもそれなりのメリットを見出すことができます。
まず疑問があれば、目の前の担当者に聞くことですぐに答えを得られるので、約款を読んで自分で探していく手間ひまを節約することができます。
いろいろな保険会社の営業担当者と顔をつきあわせて話し、質問したり商品の説明を受けているうちに、医療保険に対する関心や興味も高まってきて、保険業界や保険会社・保険商品ごとの違いについても、自然に詳しくなってくるものです。
このように対面販売の現場で、営業マンや代理店の担当者と顔をつきあわせて話をする経験を積むことで、保険に対する全般的知識がついてくる・保険商品の選び方がよくなるといった、お金に換算しがたいメリットがある点はなかなか気づきにくいところです。
このこと自体が、あなたにとってひとつの財産になるわけです。
したがって、単に保険料が高いか安いかだけで早々に対面販売を敬遠してしまうのは、たいへんにもったいない選択をしているとも言えるわけです。
もちろん、性格的に営業マンの言いなりにならない自信がない...という方は、リスクを避けるべく、ネットを通じて加入するのもよいでしょう。
ただしどの保険商品を選び契約するかは、対面販売でもネット販売でも、最終的には選んだ自分自身の責任となってくることも確かです。
それでも強調しておきたいのは、保険会社や保険商品、また販売方法がこれだけ多様化しているなかにおいて、自分や家族に最適な医療保険を選びとる知識を身につけていくことこそが必要だということです。
保険全般についての基本的知識を得たうえで、判断を他人まかせにせず、自分自身がよく納得したうえで選ぶことが大事です。
それが結局、ネット販売・対面販売のどちらを選ぶにせよ、生涯にわたって支払う保険料の総額を、ムダのない適切な水準に収めていくことのできる唯一の方法となるのです。