「保険会社間・商品間の条件を一律にそろえて、医療保険の支払保険料の比較をしよう」とあなたが思いたったとしても、その選び方はなかなか難しいものがあります。
まず、医療保険分野は国内・外資系を問わずどの保険会社も力を入れていることから、新商品が毎年、次々と登場しています。
(新発売の医療保険、保障内容と実質的な保険料をチェック もご参照ください。)
商品を選ぶ側にとっては、おおまかな特長をフォローするだけでも一苦労です。
またインターネットでよく見かける「医療保険の比較サイト」は、どういう基準で「おすすめ商品」と銘打っているのかが判然としないケースも多くあります。
支払保険料の安さを基準に比較している場合は、「商品内容にどのような差が生じた結果、そのように安くなっているのか」について、もともと保険が目に見えない商品である以上、その根拠を呈示する必要があるはずです。
しかしながら「そこから先は自分で資料請求をして調べてね」といわんばかりの比較サイトが大半であり、入り口まで連れてこられた後の比較作業そのものは、結局のところ自分で一から行うことになります。

またインターネット上の比較サイトの一部では、サイトの更新作業が滞り商品情報の一部に古い内容が混じったまま放置されて、比較の正確さを欠くケースなどもあります。
掲載商品のフォローをこまめに行っていない比較サイトを経由して契約し、いざ病気入院となってはじめて、商品内容がすでに変更されていたことに気づいたとあっては、泣くに泣けません。
特に日本では、医療保険を含む保険商品は内容の改定はひんぱんに行われているので、注意が必要です。
それでは...とばかりに、街の保険代理店や銀行の保険販売窓口を訪ねて相談する手もありますが、このときもそれなりの心構えをしてのぞむ必要があります。
保険代理店では、複数の保険会社の商品を取りそろえ、顧客のニーズに応じた商品を紹介するスタイルのいわゆる「乗り合い代理店」が、最近は増えてきています。
乗り合い代理店の担当者はプロだし、商品比較を詳しく、そしてわかりやすく行ってくれるだろう...と単純に考えるのは不用心です。
まず乗り合い代理店は、相当の数の保険会社の商品を扱っているため、ただでさえ種類の多い医療保険のひとつひとつを把握しているわけではありません。
担当者も忙しいですし、代理店としての活動実績が浅かったり、あるいは経験や商品知識の少ない新人が、現場の最前線となる窓口に座っている可能性もあります。
販売機関として、職員や担当者に対する研修がどこまでしっかり行われているかについても疑問が残ります。
特に保険代理店や銀行が特定の新商品キャンペーンを行っている時期は、一段の用心深さが必要になります。
むろん本当にそのメリットを踏まえてすすめてくれる場合もあるでしょうが、自社の手数料収入や成約数の増加を優先するあまり、顧客のニーズもろくにかえりみず、一方的にその商品をプッシュしてくるという事態も十分考えられるからです。
そもそも保険は、日頃は意識していない「万一の死亡・病気・ケガ」といった生命と健康をおびやかすような不測の事態について、顧客が自らにふりかかる具体的なイメージをありありと描いたうえで、購入にいたる特質をもった商品です。
したがって、保険を販売する側としても、どうしたら具体的に「この保険に入らなきゃマズイな...」というイメージを顧客が抱くようになるかについてのトーク(営業話法や応酬話法)の訓練を、日頃から実に熱心かつハードに行っているものです。
パソコンでシミュレートした「ライフプラン」の表をもらったり、PC画面で保険のコンサルティング営業を受けた経験がおありの方も多いと思いますが、プロのよく練られた語り口にのせられ、うっかりそのまま契約印をついてしまわぬようにするのは、なかなかに気力を要することなのです。
医療保険の加入側がとれる対策としては、まずは「自分の目と手を使って調べることを基本姿勢とする」ことが第一です。
なかでも「他人の判断まかせにしない」「ひとつの情報源だけに寄りかかって性急な判断をしない」ことは、大切なポイントです。
比較するときは最低でも「保険会社は3社程度、商品数では3~5商品程度」を比べるようにしたいものです。
保険代理店に話を聞きにいく際も、できれば3社程度を回って説明を聞き比べてみる、くらいの手間ヒマはかけたいところですね。
耳ざわりのよい営業マンの話や商品パンフレットのフレーズよりも、あくまで「事実が何なのか」を中心に、「万一の際は何がどうなるのか」についての確認を積み重ねていきます。
そのためにも、重要事項説明書や約款の該当箇所に注意しながら読み比べるクセを身につけるようにしておきましょう。
(「特約」選びのポイント~「重要事項説明書」そして「約款」 ご参照。)
そしてインターネットで情報をとったり、あるいは資料請求したりする場合も、その商品内容や情報の鮮度(日付の確認など)に至るまで、注意を払うことです。
いまや医療保険や生命保険は「若いときに加入したらそれで終わり、更新だけしておけばOK...」というものではなく、「人生の要所要所で見直しをはかる必要のある、非常時用のツール」へと、その姿を変えつつあります。
医療保険選びを難しくしている、「必要保障額の変化」とは でも記したように、日本社会・経済の構造が大きく変化しつつある現在、個人のライフスタイルも否応なくその影響を受け、家庭が「必要保障額の見直し」を絶えず迫られる時代へとすでに突入しているからです。
つまり医療保険をはじめとする「保険に関する知識」は、今日では「一回こっきりの使い切り用」ではなく「人生の要所要所で、生涯にわたって何度も必要になってくるであろうツール」と考えるべきなのです。
よりよい人生をおくる一手段として、たとえ面倒ではあっても、自らの目と手で商品の比較を行って判断を下していくという選び方を、ぜひとも身につけたいものです。