医療保険の加入率がすでに8割前後に達していることもあり、保険会社は新しい医療保険マーケットの開拓に日々しのぎを削っています。
そのような背景もあり、他社商品との差別化を進める狙いから、新しいタイプの医療保険が各社から次々と発売されてきています。
一般に保険商品は、実際に入院・通院などで給付金を受け取る瞬間まで、サービスの中味が目に見えにくいものです。
しかし商品内容の充実をはかるといっても、医療相談や医療施設の紹介・健康診断といった付加的なサービスを強化していく方向には、なかなかいっていないのが現状です。

保険法では、生命保険・医療保険などの支払において金銭以外のいわゆる「現物給付」を認めていないため、保険会社としても提供サービスのバリエーションを増やそうとしても、一定の制約がかかってくるためです。
加えて、経済のデフレ基調が続くなか保険料の低額化・割引などが消費者に受け入れられやすいという側面が強まっており、そのタイプの新商品が出やすいトレンドも形成されているようです。
それでは従来型の医療保険との違いについて、ポイントをチェックしておきましょう。
まず一つ目は、「引き受け基準緩和型(限定告知型)」の医療保険です。
これは一般の医療保険よりも加入時の審査基準を緩く設定して、高血圧や糖尿病などいわゆる生活習慣病で通院治療中の人なども、加入できるようにしたものです。
ただし、あくまで引き受け基準の「緩和」で、どんな病気でも無条件で加入できるものではありません。
ちなみに一般の医療保険にも、告知が不要な「無選択型」タイプと呼ばれる商品がありますが、これらは保険料が高いうえに、既往症を有している場合はそれらに起因する入院・通院に対する保障が除かれたりする場合があります。
しかし「引き受け基準緩和型(限定告知型)」の保険は、一般に持病や既往症があっても入ることができ、保障も行われる点で、「無選択型」タイプとは異なっています。
また、たとえ医療保険で一般に必要とされる「告知項目」が不要となっていても、この「引き受け基準緩和型(限定告知型)」特有の告知項目がいくつか設定されています。
商品を販売する保険会社にもよりますが、「過去2年以内に病気やけがによる入院歴・手術歴がない」「最近3ヶ月以内に、医師の診察・検査によって入院や手術をすすめられていない」などの独自の告知項目が設定され、それに該当した場合には、加入が難しくなる場合があります。
また、加入後の最初の一年だけは保障内容を半額に設定するなどして、ある程度のリスク回避をはかっている商品もあります。
そして保険料も、一般の医療保険に比べると2~3割程度高めに設定されています。
これまでは保険会社として必ずしも歓迎しなかったリスクの高い層を、保険料をアップすることで採算ベースにのる商品をつくりだすことで、新たな顧客マーケットとして取り込んでいこうとする狙いがあるようですね。
新商品のもうひとつの方向性は、「保険料の実質的な負担感の軽減や、割安感のアピール」です。
入院時の医療費の自己負担分(治療費の1~3割)となる金額を支払うタイプの商品や、健康保険などで自己負担となる「差額ベッド代」を保障する商品が、続々と登場してきています。
さらに、保障内容を入院と手術に絞り込んだシンプルな商品設計とすることで保険料を低額に抑えたり、あるいは解約時の解約返戻金を無くすことで実質的な保険料負担を安くした医療保険もでています。
「先進医療に関わる費用(原則として全額自己負担)」を、追加的に保険料負担が発生する特約にせず、主契約で保障する商品もでています。
(先進医療の特約については 先進医療特約は必要か~主保険に付けるときの注意点 をご参照。)
医療保険、保険料のムダをはぶくための「必要保障額」を考える でご説明したように、あくまで公的医療保険の活用を第一として必要保障額を算出し、そこからはみ出した部分を医療保険に加入することによってカバーするのが基本となります。
これら新しいタイプの医療保険は、その考え方に沿っているものが多いことからしても、検討価値が高いと言えそうです。